スネイルの銀英伝鑑賞記
そのB(第71話〜)

アニメ「銀河英雄伝説」の鑑賞記。
予備知識ゼロのスネが全110話のスペース・サーガに挑みます。
読んでもいいけど怒らないでね。

その@(27話〜54話)
そのA(55話〜70話)

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第81話「回廊の戦い(後編)〜大親征の終幕〜」  09/1/9

続々・回廊内での激闘。
地の利を利用して帝国軍に縦深陣を強き、交戦区域をピンポイント化することで
戦力差を補うヤン。ただそれならば要塞に立て篭って「トールハンマー」を連発すりゃ
いいんじゃね?
と言うのは素人考えでしょうか。何で要塞出て大軍相手に迎撃してるんだ。

圧倒的な戦力差にも関わらずに帝国を追い込んでいくヤンはやはり凄いんだけど、
ただ残念ながらそんなヤンを遥かに凌駕するほどに今回ライの言動が凄まじい
インパクトと言う点ではヤンは絶対にライに勝てない。その一例を挙げてみよう。

・「彼を再び立つあたはざらしむることこそ余と余の軍隊の赴くべき途であろう」
どうだこの台詞。ヤンの知略も銀河の彼方に吹っ飛んでしまうくらいのインパクト。
こんな古文的口調が当然のように飛び交うんだから、見てて疲れるったらありゃしない。
しかも場面が変わるといきなり寝込んでるし。もうズルいくらいの大活躍。

ところで何でヤンはここまでして勝てない戦争にこだわったのだろうか。
負けなかったのはやはり流石だけど、「民主主義の擁護」という一思想のために多くの命を犠牲に
したのは彼の信念にもっとも反する行為ではないか。結局ライvsヤンを魅せるために用意されたのが
「回廊の戦い」であり、そのためにヤンは共和派のタカ派に豹変せざるを得なかったという感が否めない。

このまま行けばヤンは思わしくない方向に行ってしまう。
だから死という手段によりその暴走に強制終了を仕掛けたのではないか。
そんな疑念が渦巻く中、次回は銀英伝伝説の回「魔術師、還らず」だ。必見。

第80話「回廊の戦い(中編)〜万華鏡〜」  09/1/5

前回「ライが出てこないのが不満だ」と書いたが、
今回はイヤになるくらい出てきた。もう始めから終わりまでライ一色。
どこを切っても同じ絵柄が出てくる金太郎飴のような、まさにライ地獄。

そのライのご威光は今回「失敗した部下への寛容」という形で発揮される。
今回の帝国提督たちは上級大将戦死を含め失敗が続く。あの双璧ですらだ。
(双璧の作戦は完璧だったが味方が付いていけなかった、というフォローはある)
でもライは怒らない。以前のライからは想像もつかないようなこの穏健化は一体何だ。

考えてみる。そもそも「回廊の戦い」とはヴァーミリオン戦の延長戦だ。
勝ちを譲られた屈辱から、「再度ヤンと決着を着ける」という屁理屈を振りかざして
この戦いが始まった。しかしライはまがりなりにも皇帝である。戦争が国家財政に
与えるダメージを知らぬはずが無い。就任直後で統治を安定させなきゃいけない時期に
金を湯水のように使う戦争をするのは愚考の極みである。しかも何の実益も無いのにだ。

そこで願望(開戦)と現実の折衷案としてハッタリを企てたと言うのはどうだろう。
戦う意志を表示してそれを誰かが止めてくれるのを狙った。これなら自尊心を保ちつつ
開戦をせずに済む。ところが誰も止めてくれなかったから取り返しがつかなくなった
ツッコミ役筆頭のオーベルシュタインが負傷退場したのはライ最大の誤算だったろう。

仕方なく開戦したライを包んでいるのは罪悪感である。
とすれば身内の失敗をガミガミ言う気にもなれず、作戦をロイエンタールに一任し、
そしてその作戦に何もツッコまなかったのも、やる気のなさの表れと言えやしまいか。
最後には戦争素人のヒルダに意見を任せたのも、甘えと現実逃避が垣間見えてならない。

とまぁ勝手に妄想してたら面白くなってきました。
ライも最後の最後でヤル気出してんだけどね。「そこを撃テヘ!!」と奇声上げたり。
しかもその直後に指くわえて硬直したりと意味不明。本当面白ぇなこいつ。大好き。

第79話「回廊の戦い(前編)〜常勝と不敗と〜」  08/12/29

「常勝」のライに「不敗」のヤン。
名に華を添えるキャッチだが、一方で語彙にキャラを縛ってはいないか。
例えばヤンは戦術面よりも人柄(温厚・寛大)で評価されるべきなのに、
「不敗」なんてキャッチのせいでおどろおどろしいイメージがつきまとってるし、
もっと悲惨なのはライの「常勝」で、こんな謙虚の欠片も無いキャッチをつけられたばかりに
倣岸不遜なイメージを背負わされるハメになってしまったのは気の毒な話だ。
まぁ実際ライは威張っているんだけどな。宇宙皇帝だから別にいいんだけど。

とにかくその「常勝」と「不敗」の対決は銀英伝の宿命であり、
それは「矛盾」の故事成語のごとくよくわからないままに終わってきた。
しかしこの「回廊の戦い」でその歴史も幕を下ろす。となると見ていてもプレッシャーを
感じるが、その重圧の割に今回は分かり易い。その功労者はビッテンである。

「敵は2万、我々は3万、差し違えれば敵は全滅し我々は1万余る」(ビッテン)
サイコー。この思考レベルで行動してくれるから、行動原理が素人に理解し易い。
「ひるむな前進しろ」→「包囲されました」→「中央突破で退却」→「包囲されました」とこんな感じ。
ヤンの複雑怪奇な作戦にことごとく引っ掛かる挑むことにより、ヤンの用意した作戦をクッキリと
浮かび上がらせてくれた。ビッテンは無能ではなく前進主義だからこそヤンを引き立てたと言える。

これが例えばミュラーだったら慎重過ぎて訳が分からなくなってたかもしれない。
アッテンとの挑発合戦もすぐ怒っちゃって勝負にならない。逆を言えば裏が無く感情移入できる。
ビッテンだったからこそ今回は分かり易かった。要は回廊に閉じ込められて包囲されただけだけど。

ただ残念だったのは「〜常勝と不敗と〜」という副題とは裏腹に、
ライが一切出てこなかった事だ。こんなのひどい釣りじゃないか。
しかも次回予告は「万華鏡」ときた。もはや何が出てくるか予測不可能。

第78話「春の嵐」  08/12/22

ライとヤンの対決は、ここ最近で「専制政治と共和政治の対決」という
構図に変化してきた。単なる勢力間の争いでは無く政治理念の戦いに。
しかしその構図にはどうにも胡散臭さを感じる。その理由は大きくふたつ。

ひとつは対決の結果として戦争が起こるのではなくて、
「戦争」という前提のもとに両者の対決が描かれているからだ。
戦争が外交の最終手段であるのは否めないが、何でその「戦争」を最初に持ってくるのか。
思えば当事者のライとヤンの対話はただ1話(第54話)が存在するのみである。
対話の機会がほとんど無いのだから、論争を置いて物理対決させている性急感が拭えない。

もうひとつは追随者たちの存在だ。誰もが開戦万歳なのはなぜだ。
帝国もヤン艦隊も反戦論者などそこに存在しない。(いたらこの物語では悪者にされる)。
ヒルダがちょっと頑張っているくらいで、後はものの見事に全員が「戦争!戦争!」である。
そう思えばヨブの方がまだ理解できる。自己保身でもハイネセンを守ったのは彼の降伏だ。

理想的な軍人よりも俗物な民間人(ヨブ)のほうがよっぽど理解しやすい。
そんな後者が悪者にされるこの物語こそが実はオカシイのではないか。
信念がぶつかりあうのは大変結構だが、初めから「戦争」を持ち出す必要もあるまい。
その戦争が「回廊の戦い」という名で次回から繰り広げられる。もはやため息。

第77話「風は回廊へ」  08/12/18

「あの時の借りを返す」という理由でヤンと戦おうとするライ。
いくら皇帝でもこんな私的な理由で開戦していいのか。しかも要塞に攻略価値も
無いのに、ヒルダ以外に誰もツッコミをいれない所が強引な展開に拍車を掛けている。
頼みのオーベルシュタインも負傷(テロ)で出番無く、まさにライの独走状態だ。

と思ったらもっと独走している奴がいた。ビッテンだ
意見した部下を叱って泣かした直後に、ファーレンハイトに同じ意見を言われて
素直に従っている矛盾ぶり。でもすべては「ビッテンだから」の一言で納得できてしまう。
それほど彼のキャラの独走ぶりは目覚しい。もうライなんか軽く追い抜いている。ライ危うし。

第76話「祭りの前」  08/12/14

「祭りの前」と言うからには、裏を返せば後には「祭り」が待っているのだ。
そしてその期待は私を裏切らなかった。
今話はパーフェクトだ。完璧過ぎる。
手放しで絶賛しよう。こんなに銀英伝をベタ褒めするのは今回が最初で最後だろう。

序盤から軍議(芸術家主催)や謎の大火と、退屈する話題が続く。
そしてロイエンタールへの処罰シーンでその退屈ぶりはピークに達する。
もうダメだ、何が「祭りの前」なのか。そう思っていたところに突如奇跡が訪れる。



「ヨッ!」という掛け声とともに
逆立ちするライ

これまで感じていた退屈感は、全てこの瞬間のためにあったと言える。
静(退屈)が一瞬に動(爆笑)に変化する、まさに「祭りの前」の題名に偽り無し。
(しかもこの時の音楽が妙にクラシカルで、松本人志的なシュールさを彷彿とさせる)

でももうこれ以上の「祭り」は要らない。でないと
本当に笑い死ぬ

第75話「雷動」  08/12/10

自分が知らない世界を覗くのは楽しい。
TV特番の「警察密着24時間」とか「緊急病棟24時間」とか死ぬほど好き。
ましてやそれが「軍隊」なんてものであろうなら、なおさらそのヴォルテージは高まる。

ストーリーにほとんど興味を失した今でも「銀英伝」を鑑賞していられるのは、
「登場人物のほぼ100%が軍人」という異様な世界観への好奇心なのだろう。
それが「世間とのズレ」を求めているのなら、今回は十分に合格点が与えられる。

謀反の容疑で拘禁されるロイエンタール。その原因は愛人問題。
普通なら「3時のワイドショー」で済むネタなのに、軍人ゆえに大問題に発展。
一応仇敵の女を身篭らせたってウラはあるんだけど、それでも個人的な私生活が
皇帝まで巻き込む政治問題に発展したのは、「軍隊社会」の為せる不条理なんだろう。

弁護役のミッターマイヤーが一味ともども正座しているのは笑えるし(元帥なのに)、
ライなんか回想シーンを引き出して悦に浸っているファンシーぶり。たかが愛人問題で
こうも深刻な事態に陥っている状況は、専制軍事国家の異常性を見るに十分だ。

しかしネタは文句無いはずのに、どうも話の構成が安っぽい気がする。
これは思うにナレーションがずっとペラペラ喋っていたことにあると思うのだ。
それほど今回のナレーションはウザい。心理状況までペラペラ解説しなくてもいいじゃないか。
知らない世界を覗き見る快感が、一気に「3時のワイドショー」的な陳腐さに終結している。残念。

第74話「前途遼遠」  08/12/6

間違い無くこれまでで最高レベルの難易度のストーリー展開。
質・量ともに圧倒的なボリュームで、生半可な視聴態度では脱落必至。
そこで今回は趣向を変えてタイムチャート式に解説してみた。(全25分)

@(0:00〜1:30)「はじめのうた」
この間(90秒)に鑑賞の準備を済ませておく。
飲み物は酒はダメ。酔ったアタマでは今回は理解できないからだ。
茶やコーヒーでも用意して待っておこう。あとはPC周りの掃除とか。

A(1:31〜4:42)「ライがダダをこねる」
本編が始まりさっそくライが騒ぐ。理由は「俺より強い奴(ヤン)に会いに行く」だ。
用意した茶をすすりながら、ほんっとに全然成長しねぇなコイツとツッコミを入れよう。

B(4:43〜7:06)「ヤンとロムスキーの通信」
ここから同盟(ヤン)サイド。ちなみにロムスキーとはエル・ファシルの指導者。
ヤンを受け入れていた彼が、帝国との緊張の高まりから一転してヤンを非難する。
ただし国体護持のための自己保身なら完全な悪役とも言えない。レベロに似ている。

C(7:07〜13:58)「シェーンコップとカリンの会話」
寝るな!起きろ!この7分間が今回一番重要なシーンだ。
ツンデレのカリンが父・シェーンコップ相手に初めて感情を露にする。でもぬかに釘。
可哀相な彼女をフォローするのは何とポプラン!彼の近頃の精神的成長は特筆に値する。
後半はユリアンの恋愛フラグと、どれも政治的な要素の強い第74話では異色のエピソード。

D(13:59〜17:13)「地球教の資料閲覧」
ユリアンが持ち帰った地球教の情報ディスクがようやく開示。
「それは驚愕すべき内容だった」というナレーションとともに音楽まで変わるが、
別に大した内容では無いので注意。地球教の名前が再出した事を留めるべき。

E(17:28〜18:48)「ルビンスキーとドミニク」
後述の「一千万人の足を止めた一通」に関わる大事な話。
オーデッツを利用するラング、しかしそのラングもハゲの操り人形らしい。
でも肝心のハゲの目的が分からないから混乱する。愉快犯じゃあるまいに。

F(18:49〜23:54)「ヤンの民主主義論」
第74話最大の難関
。人が変わったように民主主義への愛を語るヤン。
この変貌は間違いなくビュコックの死がプレッシャーになっているのだろう。
力の自制こそが民主主義の真髄というのは少々マトが外れてるようにも思えるが、
話の内容よりもそれを語るヤンの姿勢自体に注目すべきだろう。(拳まで握り締めてる)
ヤンは数話後に暗殺されるので、おそらくユリアンへのバトンタッチ作業だと理解する。

G(23:55〜25:00)「一千万人の足を止めた一通」
ロイエンタールに不穏な動きありとの報告書で動揺するライ。そして遠征延期。
今までの忠義を紙切れ一枚で帳消しにしようとするライのしたたかさに感動。
小椋佳のED歌を聞きながらおつかれ。でも多分また@に戻るはず。

感想:原作が欲しい_| ̄|○

第73話「冬バラ園の勅令」  08/12/2

何も成長してないのに、環境の変化により再評価されてしまう場合がある。
(例:有吉)。ここ最近のキャゼルヌの好感度上昇もこのパターンかも知れない。

今回のキャゼルヌは光っている。自身が成長したわけでもなく、
まわりが暗くなりすぎたせいで相対的に等級を上げたと言った方が正しい。
相変わらずの脳天気振りなんだけど、ビュコック戦死で全員が意気消沈してる
今回ではそれが美点に変化している。奥さんにやりこめられちゃう場面などその真骨頂。

まあまた環境が変われば評価は落ち着くんだけど。ただ「一発屋」と違うのは、
流行を追いまわさずに、自分自身を貫き通す強靭な持続力が必要だと言うこと。
そういう意味で個人的に心配なのがビッテン。何か無理矢理話に食い込もうという所が
一発屋ぽくてこのまま消えはしないか心配になってくる。今回も警備役でしゃしゃり出てたし。

という訳で皇帝ハイネセン到着。帝国に非協力的な同盟要人たちを
「何て強い男たちだ!」とベタ褒めするライ。いつそんな精神的成長を遂げたのだ。
と思いきや、レベロを暗殺した同盟軍人を処断する非情さを見せたりもしている。
キャゼルヌと比べるなら、常に自力で光っているライの方が一枚上手か。

第72話「マル・アデッタ星域の会戦(後編)」  08/11/29

なんでか今回は、ライがヒルダの言うことをホイホイと聞いていた。
ビュコックへの降伏勧告もヒルダの一言で実行するわ、同盟領強襲も再考するわ。
この従順さは何だ。いつからライはヒルダのイエスマンに成り下がったのか。

少し考えてみる。軍事大国の統制者であるライが、その体制を維持するために
侵攻と粛正に向かうのは言わば必然的であり、その点でライを責めるべきではない。
(そのスケープゴートとしてオーベルシュタインが存在する。ライ以上に冷徹な姿勢は
相対的にライの印象を和らげる効果がある。)

しかしそれによるライの一連の言動は視聴者から見ればあまりに高飛車で、
主人公として支持を保ち続けるのは難しい。そこで「ヒルダ」を登場させた。
穏健派としての彼女の思想と、それを積極的に進言する姿勢は、何よりも視聴者である
われわれの意見と一致する。つまり彼女は視聴者のツッコミを代弁しているのであり、
そしてライはそれに「yes」と答えることで寛大さを示し、お互いの存在意義を高めていく。

日本人的な美意識として、強者そのものよりもその強者をアシストする存在にこそ
視点が行きがちであり、「ヒルダ」は間違いなくそれを狙って設置された存在なのだろう。
ならばライが強大になるほどヒルダのツッコミが増すという方程式は終生変わらないだろうし、
このベクトルはこの先更に増大するだろう。今回ライがヒルダに従順だったのはそれで納得いく。

ところでだ
何度も言うけど玉砕する人間を美化するシーンはやめとけよ。
気持ち悪いったらありゃしない。この場面をカッコイイと言う奴らは、
ヤンの言う「後方で戦争を賛美する人間」に他ならない。もううんざり。

第71話「マル・アデッタ星域の会戦(前編)」  08/11/26

冒頭の帝国会議シーン。提督が増えすぎてもう半分くらいは分からない。
ここまで増えるとTV特番の「大家族特集」みたいで、貧乏臭いったらありゃしない。
軍人だから全員同じ服なのも、お古を使いまわしているようで悲壮感を加速させてる。

それにしても同盟軍(ビュコック)が帝国軍と戦う理由が分からない。
勝ち目の無い戦いで将兵を犠牲にされてもなぁ。しかも目的も無いのに、
全員頑張っちゃってるから困っちゃう。結果知ってるだけに見るのも辛い。

そしてその同盟軍をベタ褒めしているライはもっと分からない。
もしかすると、大家族のパパゆえに決断力を見せたかったのかも知れない。
グイグイ引っ張っていかないと絶対にグレる子が出てくるからさ、ビッテンとか。
大家族シリーズって大抵ひとりはグレてるのがいるんだから、パパって大変ですね。

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